酒類販売の流通を激変させ、誰も着手できなかった市場データを構築・提供するフロントランナーとして、新しい流れを創っていく。 上野義信氏
酒類販売卸業界における統合と改革とは?
---卸業者の抱える問題点に、解決策を提案しようとお考えになった理由は?
上野: 酒類販売卸会社の主な取引先は、レストラン、ホテル、ファミレス、居酒屋チェーンから個人経営のスナック、バー、飲み屋まで多彩です。しかしその大半が、「長い付き合いだから」、「この地域で実績があって、品揃えもいいし、まめに運んでくれるから」、「知り合いに紹介されたから」といった理由で、卸業者を選んでいるのです。居酒屋チェーンでさえ本部一括仕入れではなく、各店ごとの仕入れが大半です。
 そのため、年商数億〜10数億規模の卸が、うちは銀座に強い、うちは新宿に強いといった競争原理で住み分けしてきた。しかし、デフレが加速する中で、酒類や飲料販売だけの収益では、すでに経営が成り立たない卸が出てきました。特に首都圏では、卸の多くは、同時に賃貸ビル業などの自社資産運用でかろうじて黒字、本業では赤字という会社が続出しています。それは年商数億規模で、自社流通(配送)システムを作り、配達と倉庫担当者も雇っていたら、管理費と人件費だけで利益を食いつぶすのが当然だといえる経営環境になったからです。
 私たちはこうした卸会社に対して、営業権の譲渡という形で経営統合を行っています。そして自社開発の最適化された流通システムで仕入れを行い、同様な配送システムで取引先ニーズに応えています。スーパー等の一般流通業と異なり、この業界ではいまだにPOSシステムさえ存在しません。はっきりいってITらしいところは何もなかった。逆に何もないから、私たちが一からシステムを構築して、いろいろな情報流通を試せる広大なソースとマーケットがあると考えました。

情報提供で、メーカーの商品企画を狙う
---ITを駆使して、どのような『B to B システム』の構築をお考えでしょうか?
上野: まず従来のどんぶり勘定や非効率な配送、不必要な在庫等を、システムですべて効率化しました。たとえば取引先からの発注には、FAXに加え、インターネットを使った受注システムを導入して、履歴管理や売上データ分析などを一貫して集積できるシステムを構築。ビールメーカーなど供給取引先に対しては、業界VANに沿った電子決済なども可能になっています。ソフト面も、24時間稼働のコールセンターを設け、受発注両方の細かい問い合わせに対処しています。
 
 商品供給をより多くし、的確な配送を行い、不良在庫を駆逐した結果、利益率が格段に伸びたという点では、流通の最適化を追求したBtoBです。しかし、私たちが重要視しているのは、あらゆる視点での商品分析データの有料提供です。これも知られていないことですが、大半の大手酒類メーカーは出荷量で自社商品の傾向を判断しがちです。これだけ出荷したから、これだけ売れると。でもそれはちょっと違う。実際に売れなかったら、その製品は最終価格がどんどん下がって、利幅が削られて流通していく。酒類ディスカウンターが成長する理由はそこにあります。しかし将来を考えたら、現状ではいけないことはメーカー側もよくわかっている。でもメーカーではデータが追い切れない。そこに私たちのビジネスチャンスがあった。確実に売れる商品を創るために必要な、精度の高い売上や志向データなどの多彩な市場データ提供は、私たちが担う。すでに、メーカー側への有料提供は、拡大しつつあります。
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日本ジェノス独占輸入ワイン
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日本ジェノスが導入しているインターネットによる
発注システム、L-mode版試作システムにも注目

新しいアイデア、組織創りに加わるという魅力
---経営陣のユニークさも、御社の独自性を表していますね。
上野: ボルドーワイン名誉騎士を持つ外資系コンサル出身者、外資系銀行と証券を渡り歩いた金融の専門家、大手酒類メーカー出身で業界の酒類研究会の役員経験者、そして大手ソフトウエア企業で、特にSCMのシステムコンサルタント経験が長い私という4人の経営責任者という顔ぶれは、実に面白いですよ。だから酒販業界の慣習等はすぐ理解した上で、独自の説得力ある戦略が考え出せた。ITを軸にこの業界に貢献できるコンサルタントとして、柔軟で的確な発想で物事を進めたから、卸および大手メーカー各社の信頼を勝ち取るのも早かったのでしょう。
 
 たとえば、流通系ソフト開発でかなり上流工程までやったという経験などをお持ちの方は、今の会社ではやらせてもらえないけど、やってみたいということがあったら、ここで実現できるかもしれません。DBやWeb系で同様な経験をお持ちの方も同じです。またITを活用したマーチャンダイジングやバイヤーなど異業種のノウハウを持つ人材や、経理や人事などの業務経験のある方は、一からの組織創りを任されるチャンスでもあります。「新しき酒は新しき皮袋に盛れ」という言葉があり、これは新しい考え方は、新しい形(手法)で表現すべきということです。私たちはまさに酒販卸業界で、これを実現している真っ最中ですね。
上野氏

■編集後記
「老舗ベンチャー」を標榜し、伝統的産業をすたれさせることなく最新の経営技術によって業界全体を再構築するというきわめて魅力的な企業だ。
「外食向けワイン・焼酎の展示会」といった催しも定期主催し、豊かな食文化の紹介事業にも熱心に取り組んでいる。

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